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  3. 第6回 人と動物のクオリティー・オブ・ライフを支える不妊・去勢手術

にゃるほど犬猫塾

犬や猫たちの暮らしやしつけ、健康などについてご紹介します。

no.6

犬や猫と暮らすということ

人と動物のクオリティー・オブ・ライフを支える不妊・去勢手術

様々な効果をもたらす不妊・去勢手術

不妊・去勢手術というと、抵抗を感じられる飼い主さんも少なくないと思います。しかし、不妊・去勢手術には単に望まれない繁殖を抑えることだけではなく、犬や猫たちに身体的、精神的な安定をもたらし、人と動物が共に暮らすための社会的な側面でも大きな効果があります。

不妊・去勢手術は、人と動物のクオリティー・オブ・ライフを支える獣医学的、習性行動学的に大切な手術なのです。

乳ガンの発生率を抑える不妊手術

実際、不妊手術の普及が進んでいるアメリカでは、犬の乳ガンが減っています。最初の発情の前に不妊をすることで、犬では乳ガンの発生率を100%近く防ぐことも立証されています。また、乳ガン以外にも子宮蓄膿症をはじめとする子宮や卵巣などの生殖器に関わる病気も予防することができます。これはオスにも同じことが言えます。最近の研究では、不妊・去勢した犬のほうが一年半ほど長寿というデータもでています。

精神的に安定した良い家族を育みます

不妊・去勢手術は、精神的に安定した良い家族を育てるのにも役立ちます。例えば去勢をしていないオス犬は、一歳近くなってくるとオスという意識に目覚めて自分の権力を誇示しようとします。行動を制御されると、時には飼い主にも反抗したり、隙をみて異性を求めて外出(逃走)をしたりして事故や迷子、さらには他の犬から病気をうつされたりする危険もあります。犬や猫にとっては本能と言える性に伴う行動を叱られ続けていては、なかなか家族として良い関係は保てません。

社会的なマナーとしての不妊・去勢手術

仮に150戸のペット可マンションができて、そのうちの30戸で去勢をしていないオス犬が暮らしていたとします。そこで朝晩30頭もの犬が散歩に出てその辺に排尿をしていったらどうなるでしょう?去勢をしていないオス犬は、1回の散歩で10~15回も排尿をします。周辺住民の方たちにとっては大変迷惑なことですね。早い時期に去勢をすればこうした頻繁な排泄行動をはじめ、性に関わる様々なトラブルを防止できるのです。

不妊・去勢手術は、身体的、精神的な効果はもちろん、都市や集合住宅で犬や猫と暮らす飼い主として、社会的なマナーの一つと言えるでしょう。

profile

柴内裕子先生(獣医師)

赤坂動物病院 名誉院長

日頃より伴侶動物医療に携る一方で、社会活動コンパニオンアニマルパートナーシッププログラム(CAPP)のリーダーとして高齢者や障害者の各種施設や病院、小学校などを動物たちと共に訪問するボランティア活動に幅広く活躍されています。(柴内先生には、東リ「犬家猫館」の製品開発の際にもさまざまなアドバイスをいただいております)