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  3. 第49回 家庭でできる応急処置(1)「熱中症」

にゃるほど犬猫塾

犬や猫たちの暮らしやしつけ、健康などについてご紹介します。

no.49

犬や猫の安全と危険回避

家庭でできる応急処置(1)「熱中症」

増加する「熱中症」

今年の夏も猛暑になりました。各地で熱中症のニュースをよく耳にします。最近は、人だけでなく、犬や猫の熱中症も多発しています。それは、犬や猫たちも、室内で人と共に暮らすようになって閉ざされた空間で暮らすことが多くなったことも要因にあげられます。

動物たちは自然の中にいて、樹木や土がある、そのような環境の中で犬や猫を自由に行動させられるのであれば、犬や猫は自分達で涼しい場所を探して暑さをしのぎます。地面が土なら、犬は穴を掘ってそこに体を埋めることで体を冷やします。しかし、最近の住宅は気密性が高く、熱中症の危険が非常に高まっています。また、危険は室内だけでなく、車内でも同様です。

熱中症を防ぐために適切な室内環境を

人間の暮らしが変化する中で、共に暮らす犬や猫の環境も変化しています。飼い主が少し油断して注意を怠った時、たとえば真夏、窓を閉め切った状態ではたして室温は何度になるか想像してみましょう。密閉された室内が熱されることで外気よりも温度が上昇し、45℃くらいまで上がることもあります。ましてや、密閉空間では空気の動きがありません。

一般的に犬と猫がそれぞれ耐えられる気温というのは、猫は30℃、犬は28℃くらいまでです。締め切った室内は精神的圧迫になる上に、風が動かない状態で温度が上がれば、人間でも体調を崩します。犬や猫も同じです。自分の体温の調節ができなくなり、熱中症になってしまいます。また、最近では強い日光にあたることで発症する熱射病も含めて「熱中症」と呼ぶようになりました。

熱中症の応急処置

熱中症は、多くの場合、飼い主は気付かずに一緒に散歩をして、帰ってきたら突然犬が倒れたというようなケースや、飼い主が帰宅すると室内で犬や猫が倒れていたというケースが多くみられます。

応急処置としては、まず冷やすことです。犬や猫の体に冷水をかけて、扇風機の風をあてて体を冷やす、エアコンで部屋を一気に冷やすなど、とにかく冷やすことが大切ですが、直ちに動物病院に連絡を取って動物の体を水で濡らしたタオルで巻いて、すぐ動物病院に連れていきましょう。

熱中症のサインとしては、一般に口を開け、舌を出してあえぎ呼吸、浅くて速い浅速呼吸があります。また、軽度の熱中症のときには嘔吐したり、ぐったりして動かないこともあります。暑い日にぜいぜいとあえぐような呼吸をしていたり、突然嘔吐や下痢などをしたときには、熱中症も疑いましょう。そして、すぐに室内(もしくは車内)の温度を下げて、犬や猫の体を冷やします。

熱中症は急性の症状ばかりではありません。食欲の低下や他の病状を悪化させることもあり、急性症では多くの場合予後は悪く、時には死にいたることもあります。非常に危険な病気です。できるだけ早く動物病院での治療を受けて下さい。

近年、天候も不順で真夏だけでなく初夏から初秋まで暑い日が続きます。九月になったからといって油断しないで、犬や猫が暮らす室内環境、温度に気を付けて、熱中症を起こさないように十分な注意をしましょう。

profile

柴内裕子先生(獣医師)

赤坂動物病院 名誉院長

日頃より伴侶動物医療に携る一方で、社会活動コンパニオンアニマルパートナーシッププログラム(CAPP)のリーダーとして高齢者や障害者の各種施設や病院、小学校などを動物たちと共に訪問するボランティア活動に幅広く活躍されています。(柴内先生には、東リ「犬家猫館」の製品開発の際にもさまざまなアドバイスをいただいております)