1. 犬家猫館.com
  2. にゃるほど犬猫塾
  3. 第50回 家庭でできる応急処置(2)「やけど」「異物飲みこみ」

にゃるほど犬猫塾

犬や猫たちの暮らしやしつけ、健康などについてご紹介します。

no.50

犬や猫の安全と危険回避

家庭でできる応急処置(2)「やけど」「異物飲みこみ」

やけどの場合

動物のやけどの原因は人の子どもとよく似ています。

多くみられるのが

  1. (1) 台所での事故あやまって熱湯をかぶってしまう。 喜んで飛び付いた拍子に鍋の中身がひっくり返ってしまう。
  2. (2) お風呂での事故熱湯に近い状態のバスタブに落ちてしまう。
  3. (3) 電気のショートによるやけど電気コードをおもちゃ代わりにしてかじって、歯根部分や口唇にやけどする。
  4. (4) 事故とは異なりますが、老齢動物の場合寒い時期にあたたかい場所へ近付こうとして、ストーブに体を近づけてやけどしてしまう。保温用ヒーターの上に寝込んでしまい低温やけどしてしまう。

このような事故が起きた場合は、まず応急処置をします。

  1. (1) やけどした部分を冷やす冷水や氷のパックなどで冷やしながら、急いで動物病院へ
  2. (2) 動物病院までの距離が遠い場合やけどでただれてしまった部位にサラダオイルなどの油をつけて傷口を保護し、さらに冷やし続けながら病院へ
  3. ☆ やけどの面積が多い時命にかかわりますので、とにかくすみやかに動物病院へ(傷口から二次感染の危険性があり、抗生物質などの点滴治療が必要)

また、やけどをすると、動物は痛みと恐怖のためにパニック状態になり、傷に触れようとすると飼い主にでも攻撃してしまうこともありますので、安心させるように声をかけながら気を付けて接します。

犬や猫のやけどと人間のやけどには違いがあります

犬や猫はやけどをした直後は見た目に症状が分かり難いことがあります。

人の皮膚のようにやけどしたところが真っ赤になったり皮がめくれたりしません。

高熱の油や熱湯をかぶったりすれば、見た目に分かるくらいの変化が出ますが、多くの場合直後は見た目の変化があまりありません。

三日~五日後くらいに突然皮膚と毛が一緒に剥がれ落ちて爛れ、初めてやけどにに気付くケースもあります。

「大した火傷ではないだろう」と見た目で安易に判断しないで動物病院で診察してもらうようにしてください。

異物を飲みこんでしまった場合

最近、動物たちが室内で家族と共に暮らし、とても幸せなことですが、困った事故も起こります。最も多くなったのは異物の飲みこみです。(異物摂取)

飼い主の留守中に異物(食べてはならないもの)を飲み込んでしまうことです。

飼い主の目の前で飲み込んでしまうケースも多くあります。

最近は夜間急患の約40%が「異物の飲みこみ」と言っても過言ではありません。

  • ゴルフから帰宅した飼い主が床に置いたタオルや靴下などを飲み込んでしまう中型犬や大型犬。においや汗がついたものは非常に興味深いのです。
  • おやつや肉、魚の臭いのついたラップやホイルも要注意です。
  • 飼い主が買ってきた惣菜を食べてしまい、骨や串、包装紙なども一緒に飲みこんでしまう。
  • オモチャを囓っているうちに壊して飲み込んでしまう。
  • 果物の芯や種など。

小さい子どもと同様に十分な注意が必要です。

大型犬の例ですが、ドッグランで飼い主がボールを投げ、何頭もの犬が取りに走って、「他の犬にボールを奪われたくない」とボールを飲みこんでしまい、飼い主は互いに誰かが持ち帰ったと安心していると、しばらくして嘔吐が起こり、ボールを二つも三つも飲みこんでいたケースもあります。

目の前での異物の飲み込みは多くの場合、危ない!と思って、飼い主はとっさに「あっ!」と大声を出したり、「口から出しなさい!」と怒ってしまったりします。そういった反応をすると、犬は取り上げられると思ってとっさに飲みこみます。

そのような場面では、突然大声を出したりしないで、落ち着いて、穏やかな声で犬の名を呼び、大好きなおもちゃや食べ物を見せて、気を取られてポトリと口から落としたところを取り上げましょう。これには日頃からの心掛けが必要です。

異物を飲みこんでしまった時の対処法

動物病院に連絡を取って状況を話し、一刻も早く動物病院へ
飲み込んだ物と同じ物があれば持って行きましょう。(たとえば焼き鳥の串や靴下などはレントゲンに写りにくい為、診察時に何をどれだけ飲みこんだのか診断に役立てることが出来ます)

家でできる対処法

食塩水を飲ませる方法等もありますが、飲むのを嫌がったり、呼吸器に入ったり吐き出させることがかえって危険なこともありますから、日頃から主治医に指導を受けておくこと、また夜間緊急病院を探しておくことも大切です。

動物病院での処置

異物の大きさや種類、時間の経過によって処置を行います。

  1. 催吐剤の投与や静脈注射で吐かせる飲み込んだものによっては点滴治療等を必要とします。
  2. 内視鏡処置(麻酔が必要)1.で出せない場合、内視鏡処置をしますが、滑るものや固くて大きいものは内視鏡では取れません。
  3. 開腹手術開腹し、胃や腸を切開して摘出します。

このような事故が起こらないように、小さい子どもが家にいるのと同じように、家の中を整理し、飲みこんでしまいそうなものは引出などしっかりと届かないところに片付けておきましょう。

異物の飲み込みは何にでも興味を示す活発な犬に起こりがちです。何回も繰り返す犬もいます。飼い主の注意次第で防ぐことが出来ます。改めて生活の場を見直してみましょう。

profile

柴内裕子先生(獣医師)

赤坂動物病院 名誉院長

日頃より伴侶動物医療に携る一方で、社会活動コンパニオンアニマルパートナーシッププログラム(CAPP)のリーダーとして高齢者や障害者の各種施設や病院、小学校などを動物たちと共に訪問するボランティア活動に幅広く活躍されています。(柴内先生には、東リ「犬家猫館」の製品開発の際にもさまざまなアドバイスをいただいております)