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  3. 第59回 保護犬、保護猫について

にゃるほど犬猫塾

犬や猫たちの暮らしやしつけ、健康などについてご紹介します。

no.59

犬や猫と暮らすということ

保護犬、保護猫について

保護犬、保護猫について

街中や家の庭などで猫の赤ちゃんを見つけたことはありませんか。近くに親猫がいる場合もありますが仔猫だけ捨てられていたり置き去りになっていたりすることもあります。

置き去りは、親猫が仔猫を1頭ずつくわえて安全な場所に移動する際に、途中で自動車が通ったり、人が寄ってきたりして子猫を落として行ってしまうことがあるからです。そして元の場所に次の子を取りに行っても、途中で落とした子を迎えに行くことが出来ないで、街の中でポトンと新生児が置き去りにされているという状況が生まれます。

そのような仔猫を見つけた場合、車が来るかもしれない、カラスにつつかれてしまうかもしれない、炎天下で日差しが強いかもしれない、そう思うと放っておけないと思う方は多いと思います。

保健所は開いていない、保護施設が近くにない、自分のうちに連れて帰っても動物不可だった場合は、保護した動物を動物病院へ連れてこられるケースも多いものです。

犬や猫を保護したら、第一に保健所に連絡を取って指示を受けます。次に迷子犬と思われたら交番にも連絡を取りましょう。最寄りの動物保護団体に連絡を取って下さい。それでも困ったとき、そしてひどいケガをしている時などは、動物病院に相談します。

私たちの病院でも、様々な理由で地域で保護された犬や猫を受け取り、その動物の健康状態や年齢などに合わせてケアを行い、ウィルス検査やワクチン接種、不妊去勢手術などを行い、希望される方の家族に迎えて頂くまで大変な努力が必要になります。一般の方が動物を拾ったら、スズメ一羽でもどうしようもできません。動物病院も最大の協力をしますが、しかし、これに伴う労力と経費も甚大で限度があります。

(スズメなどの幼鳥は拾わずに安全な場所に置いて、親鳥が迎えに来るのを待つことを環境省では指導していますが、見かねて保護してしまう方も多いものです)

動物病院以外にも動物愛護のグループなどで、新生児の面倒を見れる人をネット等で連絡を取り合い、保護するような組織も多くなって来ましたから調べて協力を得ましょう。

行政の取り組みも必要

東京都の千代田区は日本でも犬猫の保護が進んでいます。地域で放置された猫の情報が入ると千代田区の保健所員が保護団体の人と同行して保護します。千代田区と港区は隣接しているので、港区の赤坂動物病院へ連れてこられることもあります。

「一頭も不幸な動物を出さない」という千代田区の方針で、この何年間は一頭も処分を出していません。それは何らかの形で動物病院と保護団体のメンバーが、家族として暮らして下さる人を探したり、最期まで面倒を見ているからです。このような団体は、最近全国にたくさんできていて、行政も携わって協力しているところもあり、これからもこのような取り組みは期待されます。

地方で保護犬、保護猫が増えている理由

今や犬や猫は「野生」の動物ではありません、必ず人が関与して手助けしなければなりません。感染症にかかっている猫の場合は放置すれば、若齢で病気で死亡するだけではなく、感染症を蔓延させる原因にもなります。

都会では、今、放浪している犬はほとんどいません。しかし避暑に行った人が犬を捨てて帰ったり、猟に行った人が捨てていくケースが山間地で増えています。猟犬を連れて行って、来年まで面倒を見るのが大変だからといって使い捨ての考えで捨てる人もいます。あってはならないことですが、夏が終わると放浪している犬が増えることが、避暑地で問題になっているのです。

保護犬、保護猫の特有の病気

保護猫の場合、多いのが感染症です。

猫の感染症は非常に蔓延していて、猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)、猫白血病ウイルス感染症などは、生後2ヶ月以上でないとウィルス検査でも確実に判定出来ないため、生後3日で拾ったら2ヶ月間以上のケアをしないともらい手探しも出来ません。ボランティアさんでそういうことを理解した方に預かって頂くのがベストですが、2ヶ月目にウイルス検査をして、もしも猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)や猫白血病ウイルス感染症が診断された場合は更にたいへんです。人間や犬にもうつりませんから(猫もべったり一緒に生活しない限りうつりません)一頭だけで生涯面倒を見ていただけるという方や別々に管理出来る方にお願いすることになりますので、大変な問題です。

犬の場合、飼い主が意図的に放置して山の中など自然の中で長い間暮らしていたケースは、腸内寄生虫(回虫や条虫をはじめ様々な寄生虫)や外寄生虫(ノミ、ダニ、シラミ)更にフィラリア症の感染もみられ、更に妊娠している場合もあり、行動学的な問題を含め改めて新しい家族に迎えられるのには多くの問題を乗り越えなければなりません。多くの方々の協力をお願いします。

profile

柴内裕子先生(獣医師)

赤坂動物病院 名誉院長

日頃より伴侶動物医療に携る一方で、社会活動コンパニオンアニマルパートナーシッププログラム(CAPP)のリーダーとして高齢者や障害者の各種施設や病院、小学校などを動物たちと共に訪問するボランティア活動に幅広く活躍されています。(柴内先生には、東リ「犬家猫館」の製品開発の際にもさまざまなアドバイスをいただいております)