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  3. 第7回 心と身体に健康な住まい方

わんだふるな住まいの知識

ペットと暮らす住まいのポイントをケーススタディでご紹介します。

no.7

犬や猫のストレス回避

心と身体に健康な住まい方

今回は、平成17年4月2日に開催された「東リ イヌヤネコタチ ゼミナール『心と身体に健康な住まい方』での講義内容をここでもご紹介します。

「犬だから吠える」「猫だから爪とぎは仕方ない」と、犬や猫たちの訴えを無視してしまっていることはありませんか? 彼らは決して「飼い主を困らせよう」と思ってそうしているわけではありません。その行動の中に重要な訴えが隠されている場合があります。
気持ちがよく居心地のよい家であれば、彼らは大好きな飼い主さんと幸せに暮らすことができます。彼らのシグナルを見落とさずに、素敵な暮らしを作り上げたいものです。そのためには何が必要なのでしょうか。

1.素敵な飼い主さんになる

大好きなはずの飼い主が、彼らにとってのストレスの要因であればとても悲しいこと。素敵な飼い主さんの条件とは…

  1. 1.「頼もしく・分かりやすい」
  2. 2.「落ち着いていて、怒るより褒めてくれることが多い」
  3. 3.「たくさん遊んでくれる」

住まいとは関係がないようですが、ペットにとってはとても分かりやすく、大切なことなのです。こうしたことを意識して、犬や猫たちと接していきましょう。

頼りがいがあり、
指示が一定で、わかりやすい
入っていい場所といけない場所が、まちまちではなく、はっきりわかる。
→「居場所を制限」
勝手に触ってはいけないものは、口の届く場所にない。
→「収納率の確保」
噛んだり、爪とぎをしていい場所といけない場所がはっきり違う。
→「仕上材の適材適所の選択」
怒ることが少ない
(失敗させないで)
(無駄な誘惑がない)
(自信を持たせてくれる)
ストレスを感じさせない健全な空気の確保。
→「上手な通風・換気の徹底」
犬や猫たちが失敗しても、すぐに対処できる。
→「掃除がしやすい住まいづくり」
安心して逃げ込める、「居場所」を確保。
→「ハウスとベッドの用意」
たくさん遊んでくれる。
猫ならば一人でも遊べるように
平面プランと内装材の仕上げを、毎日の掃除がしやすい状態に。
猫が上下に移動できるルートの確保。

2.快適な住まいを整える

居場所の確保

ケージを利用して犬や猫たちの居場所を明確にしてあげることは大切なこと。入っていい場所、いけない場所を、住まいの中で明確にしてあげてください。
犬にとって、ハウスとトイレはとても重要です。ケージ(サークル)内であれば、トイレはハウスの対角線上で一番遠い場所がベストです。また窓のすぐそばは一日で気温差がありすぎ、騒音の入り口にもなりますので、ハウスは静かで落ち着いた場所に確保してあげましょう。

収納率の確保

彼らに触ってもらいたくないものは、外に出さないことが鉄則です。彼らは触ったり、かんだりして物を認識しますから、新しいものがあれば触ってみようとするのです。「見せない」「入らせない」「触らせない」は収納の三原則です。
私が設計を依頼されたときは、お施主様の持ち物プラス10%~20%の収納を確保するようにしています。

掃除がしやすい住まいづくり

快適で安全な住まいのためには、健康な空気環境の維持が出来るように、掃除がしやすい環境づくりも重要です。室内の床や壁などに最適な建材を使用するなどの工夫をしましょう。すり汚れが多くなる場所は水拭きがしやすい素材を、猫の爪とぎ防止には表面が平滑なものを選択してください。腰壁から上は、消臭・防湿建材の積極的な活用をお勧めします。
さらに床材には様々な選択肢があり、それぞれに長所も短所もあります。掃除のしやすさでいえば、目地の少ないシートタイプのもの。彼らの足のことを考えれば、カーペットがお勧めです。

防御だけでなく満足させて!

「爪とぎ」「噛む」「掘る」というのは正常な行動です。重要なことは彼らが好きな場所で、好きな素材で気持ちよくやらせてあげること。爪とぎや噛むおもちゃは、気に入るものを選んであげてください。
住まいの中にキャットウォークの設置をする場合、高さ1.5mくらいのキャットウォークがお勧めです。猫は基本的に地面で生活する生き物。落下事故も多いので気を付けてあげてください。

3.高齢化対策も万全に

彼らはいつまでもかわいいので、「年をとっている」ということを忘れがちです。年をとったときのゾーニングも早めに考えてあげてください。問題行動を解消するためにリフォームする場合は、その原因をまず見極め、一時対処とともに全体プランを見直しましょう。

profile

金巻先生(一級建築士)

一級建築士・博士(工学)・家庭動物住環境研究家一級建築士事務所 かねまき・こくぼ空間工房 主宰。

犬や猫といった家庭動物(ペット)との暮らしをテーマにした建築設計と、環境コーディネーターとして活動。適正飼養と環境整備に向けた学術研究も進めている。著書に『犬・猫の気持ちで住まいの工夫』(彰国社)、『ねこと暮らす家づくり』(ワニブックス)、など。ペット防災のNPO法人ANICE理事。東京都動物愛護推進員。H25年度日本建築仕上学会学会賞(技術賞)「ペット共棲住空間用の建材に関する研究と技術開発」

  • 「猫と暮らす住まいのつくり方」

    ライフスタイルやプランに応じた住まいの実例が豊富!猫にとっての快適ポイントや危険対策がわかる!業者選び、内装材、予算などのお役立ち情報も!

  • 「犬・猫の気持ちで住まいの工夫」増補改訂版

    単なるペットのトラブル対策に終わらないしつけやトレーニングも踏まえながらのアドバイスが満載。かわいいイラストも◎。改訂版では、室内環境の意識が高まっている猫の情報と、東日本大震災で課題がみえたペット防災対策が増えました。

    彰国社刊 定価(本体 1,800円+税)

  • 「ねこと暮らす家づくり」

    猫の「あったらいいニャ~」に応えるための、賃貸やマンションでもチャレンジできる工夫を案内しています。

    ワニブックス刊 定価(本体 1,300円+税)