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わんだふるな住まいの知識

ペットと暮らす住まいのポイントをケーススタディでご紹介します。

no.23

犬や猫のしつけ

擬人化の危険:床に座る生活

床に腰を下ろして座ること。それは、犬の視線に人が降りてあげる事になり、お互いの心が通いやすい住まいづくりに思えます。しかし、時として問題を起こすことがあります。
例えば、お客様がいらした時、接待する席の周りを犬が興奮して回り、いつまでも落ち着かないという事がありませんか? こういった問題は、座卓のような接客の場が腰の低い位置の場合に起こりやすいことです。

興奮する犬への注意は逆効果

来客時、犬は見慣れないお客様が気になってしかたありません。その周りをウロウロしたくなります。また、家族が団欒を囲っている場合でも、仔犬や興奮しやすい犬ならば、人の注意を引こうとその席の周りを落ち着きなく歩き回ることが多いものです。
犬が席の周りを廻っている時、手早く落ち着かせる為には、人はそれを全く無視すること。興奮する犬に人が反応して「静かにして」と声をかけてしまうと、興奮を煽っている事となり逆効果となります。

接客の席は視線が少し高めになるように

ところが、接客や団欒している視線が低くなるリビングセットや座卓の場合、動き回る犬を気にならないふりをする事は難しくなります。特に中・大型犬では、人が床に座った状態は、ちょうど視線が交わりやすい高さです。これではいくら無視しようとしていても、真横をウロウロと動かれれば人は反射的に見てしまいます。犬にしてみればそれは構ってもらっている事です。「動き回る=人の関心が自分に寄せられる」という誤った学習をしてしまいますし、興奮もおさまらなくなってしまいます。 ですから、接客の席は全く床に腰を下ろすのではなく、椅子に腰かけるなど、視線を少し高めに設定してあげましょう。

間違いやすい「擬人化」

本来は接客中には犬にはサークルの中に入っていてもらうべきです。興奮がおさまってから出してあげるようにし、静かにした時に褒めてあげれば、静かにしている事が正しいという事が、犬にもわかるようになります。
お客様がいらしたら、家族の一員の犬も一緒に席を囲ませてあげるというのは、一見素敵な光景ですが、これも間違いやすい「擬人化」の一つです。落ち着くトレーニングができてからにしてあげましょう。

profile

金巻先生(一級建築士)

一級建築士・博士(工学)・家庭動物住環境研究家一級建築士事務所 かねまき・こくぼ空間工房 主宰。

犬や猫といった家庭動物(ペット)との暮らしをテーマにした建築設計と、環境コーディネーターとして活動。適正飼養と環境整備に向けた学術研究も進めている。著書に『犬・猫の気持ちで住まいの工夫』(彰国社)、『ねこと暮らす家づくり』(ワニブックス)、など。ペット防災のNPO法人ANICE理事。東京都動物愛護推進員。H25年度日本建築仕上学会学会賞(技術賞)「ペット共棲住空間用の建材に関する研究と技術開発」

  • 「猫と暮らす住まいのつくり方」

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