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わんだふるな住まいの知識

ペットと暮らす住まいのポイントをケーススタディでご紹介します。

no.29

犬や猫のお手入れ

快適な猫の爪とぎ

猫の爪とぎで部屋を傷つけられるのは困りものです。しかし、爪とぎは猫の本能的行動。古い爪を剥がして新しい爪を出すという理由の他に、テリトリーへのマーキング(臭いつけ)や、爪の刺激による心のリフレッシュ効果などがありますので、これを人の都合で止めさせることはできません。

猫の好みやタイミングをうまく利用

叱ってその場は止めさせられても、猫の場合は人の「指示」に従ったのではなく「驚き」や「恐怖」でその場は止めただけ。猫は犬と違って「服従性」が発達していないからです。「人間が居ない時にやろう」と思う程度で、シツケだけでは上手くいきません。
しかし、よく観察してみれば、猫にとって爪とぎに必要なタイミングと場所、素材などに好みがある事がわかります。これを上手く利用して誘導してあげれば、家の中を傷つけられてしまうという事を減らすことができます。

爪を研ぐのに向かない素材・向いている素材

壁や床の表面素材が与えている「爪とぎ器」と似たような感触である場合も、爪とぎ以外の場所で爪とぎする原因にもなります。猫にわかりやすいように、傷つけられては困る場所は「爪とぎ場所」と明確に感触を変えてあげましょう。爪を研ぐのには魅力的でない素材とは、表面がツルツルするような爪の引っ掛かりが少ないものです。
猫にとってマーキングが必要な場所とは、一般的には部屋の出入り口や目立つ角や柱などです。壁や床を爪が研ぎにくい素材で防御すると当時に、必要な場所にはその猫ごとに好みの素材の「爪とぎ器」を設置してあげましょう。市販の爪とぎ器の他、爪が引っ掛かりやすい柔らかい感触のパイン材の角材や、麻布を巻いた90cm程度の高さぐらいの柱を添えてあげると喜ばれます。

猫の行動から気持ちを読み取る

その他、その猫の様子を見ながら、その子が爪とぎを必要としている場所を見きわめてあげましょう。多頭飼育だと壁に爪とぎする確率が増えますが、床でする事を好む子も多いですし、同じ猫でも時と場合によって壁と床を使い分けている事もあるものです。
たとえば、トイレを終わった後に必ず近くのカーペットで爪とぎしている場合、「トイレの後は床でバリバリしたい。それも、柔らかくて引っ掛かりがあるものがいい」と、好みを詳しく説明してくれているようなもの。ですから、トイレから出た付近の床に、布などの編みこんだタイプの「爪とぎ器」を床に敷いてあげます。上手く猫の気持をくんであげられていれば、カーペットではなく与えた「爪とぎ器」でやってくれます。

profile

金巻先生(一級建築士)

一級建築士・博士(工学)・家庭動物住環境研究家一級建築士事務所 かねまき・こくぼ空間工房 主宰。

犬や猫といった家庭動物(ペット)との暮らしをテーマにした建築設計と、環境コーディネーターとして活動。適正飼養と環境整備に向けた学術研究も進めている。著書に『犬・猫の気持ちで住まいの工夫』(彰国社)、『ねこと暮らす家づくり』(ワニブックス)、など。ペット防災のNPO法人ANICE理事。東京都動物愛護推進員。H25年度日本建築仕上学会学会賞(技術賞)「ペット共棲住空間用の建材に関する研究と技術開発」

  • 「猫と暮らす住まいのつくり方」

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