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  3. 第48回 脚で選ぶカーペット

わんだふるな住まいの知識

ペットと暮らす住まいのポイントをケーススタディでご紹介します。

no.48

犬や猫と快適に暮らすためのインテリア

脚で選ぶカーペット

犬や猫の暮らす部屋で、私がカーペットに期待する最大の性能は、歩く時に膝や腰にかかる衝撃を吸収してくれる緩衝性能です。

家の中でも犬猫は跳ねたり飛び降りたりすることは多いですね。「ウチのコは暴れたりしないわ」という場合でも、寛ぐ時にソファーの上に乗ったりしていませんか? 小型犬では転落や飛び降りて脱臼という事故や腰のヘルニアを誘発することも多いため、獣医師からソファーに犬を乗せるのは控えるようにと指摘があります。

平気でジャンプしているように見えても要注意

とは言っても、犬は人の視線の高さに上がろうとしますし、人が一緒に寛ぐ時だけ、と許してしまっている家庭が多いようです。犬でもソファー程度なら平気で上がれているように見えます。しかし、小型犬の場合は危険が伴っています。自分の背丈より高い場所から降りる場所は家の中には多く、その場合、前足に全体重をかけて飛び降りることになります。胴長犬種の場合は、ジャンプして上るという行為自体が腰に負担は大きく、小型や年齢に関わらず高い場所へ上ることは避けさせなくてはいけません。

もちろん、犬猫の体の構造は人より跳ねたり飛び降りたりするための機能は長けています。強靱な体のバネと健康で潤った肉球が衝撃を吸収できます。しかし、これから骨格が完成していない幼い時期と、高齢や体調不良で肉球が乾いている場合はその体の緩衝性も不十分です。また、掘るのに適したよう脚先が細くなっているものは、健常でも堅い床は滑りやすいようなので、注意が必要です。

骨格の成長期と衰退期には住環境でサポートを

成長期、犬や猫は生まれてから人より何倍もの速さで成長し、一年で大人の骨格になります。大型犬ではこの急速な成長時は関節へ負担のないよう労わってあげる必要があります。おとなしい性格であっても、子供は活発で、家の中でも飛び回りがちです。そして、高齢期。犬猫も関節のクッションの役割をしている軟骨が老化によりやせ、足腰は弱くなってきます。後ろ脚が滑っている状態は、脚だけなく腰へも負担が強いといえます。

そんな、骨格の成長期と衰退期には、住環境でサポートをしてあげたいものです。飛んだりしても足腰に負担がかかりにくい、爪が出ている脚でもしっかり蹴りこめるカーペットは安全で、メンテナンスで入れ替えが容易なタイプなどは頼もしいアイテムです。

カーペットの選択基準は前脚の形状

カーペットのパイル形状ですが、輪になっているループタイプは爪を引っかけやすいということで、カットパイルのタイプを汎用的にはお勧めしています。しかし、ループパイルはヘタリにくく掃除がしやすいというメリットも大きいため、犬なら体型や性格などの条件が合えば私は選択肢に入れて良いと考えています。

判断の基準は前脚の形状です。犬種によっても地面を踏みしめる着地面の形は大きく異なります。先に挙げたような脚先が細くなっているものの反対に、ごつごつした地面でも踏みしめられるよう、脚裏が平たく大きいタイプがいます。この脚裏が広いタイプなら、ループでも毛足が短く目が詰まった編みを選べば、爪で引っ掛けてしまう事は少ないでしょう。

ループを避けるべきなのは、爪をループに引っかけ怪我をする可能性がある形状、例えば、小型犬で狼爪の位置が地面に近いとか、後脚で狼爪がある場合です。犬種の特性などで掘るのが好きな性質なら、脚形状に関わらず、無駄な誘惑になるのでカットパイルタイプが安心でしょう。

profile

金巻先生(一級建築士)

一級建築士・博士(工学)・家庭動物住環境研究家一級建築士事務所 かねまき・こくぼ空間工房 主宰。

犬や猫といった家庭動物(ペット)との暮らしをテーマにした建築設計と、環境コーディネーターとして活動。適正飼養と環境整備に向けた学術研究も進めている。著書に『犬・猫の気持ちで住まいの工夫』(彰国社)、『ねこと暮らす家づくり』(ワニブックス)、など。ペット防災のNPO法人ANICE理事。東京都動物愛護推進員。H25年度日本建築仕上学会学会賞(技術賞)「ペット共棲住空間用の建材に関する研究と技術開発」

  • 「猫と暮らす住まいのつくり方」

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