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  3. 第50回 ハウスが隠れ家であるために(後編)

わんだふるな住まいの知識

ペットと暮らす住まいのポイントをケーススタディでご紹介します。

no.50

犬や猫のストレス回避

ハウスが隠れ家であるために(後編)

ハウスやベッドといった隠れ家を取り巻く「間」の使い方は、その室内全体のエリア分けを犬猫の視点で見てみるとわかりやすいでしょう。

空間は3つのエリアに分けられます

犬のハウスが置かれた部屋の状態を例にして見ていきましょう。多くの方が、リビングの一角や隣接するようにハウスを置かれていますね。ハウスの外にサークル、サークルの外がリビングといった状態ではないでしょうか。これを使い手としての犬の立場から見ると、空間は3つのエリアに分けられます。

まず、中心のハウスは不安や動揺があれば自ら逃げ込む隠れ家、プライベートになります。脱力していても安心なリラックスの場所です。

全体空間となるリビングは、パブリックです。家の中であっても、犬猫にとって(人にもですが)自分の個室以外は、実際はパブリックなのです。特にリビングは、自分のものではないモノが置いてあるし、自分には全く関係ない知らない人が出入りすることもあります。家族が集う楽しい場所であるのと当時に、少しばかり緊張する場所です。

プライベートとパブリックとの間にあるのが、セミ・プライベートエリアです。隠れ家の周りを緩衝地帯のように取り巻く層のような空間を、私は「警戒と勇気のスペース」とも呼んでいます。

そこは、こんな使い方がされています。

来客などで、犬猫が不安や動揺から隠れ家に逃げ込んだら、すぐには出ていくことは無理です。冷静になってきたなら、ちょっと様子を見るために出てきます。ただ、警戒しながらなので、隠れ家にすぐ戻れるほんの少しのところまでです。様子がわかって勇気がわいてくると、触れあいたい気持ちからパブリックな場所に出てみたくなります。こういった段階を踏めると、来客や新しいモノといった未知の相手にも前向きになる手助けになっていくでしょう。

また、隠れているとき近寄ってくる誰かがいても、セミ・プライベートエリアに踏み込んでこないならば、過剰に反応しなくてすむことにもなります。隠れ家の安心感を強くしてあげる機能も、このエリアにはあるのです。

緊張とリラックスのバランスが大切

ですから、家族はそのコが隠れ家に入っている時には、自分のペースで物事に向き合えるよう、そっとしておいてください。落ち着いて自分から出てくるのを待つ時間は、人にも、落ち着いて対処する余裕を与えてくれます。人も犬猫も、興奮や緊張を緩めることができるわけです。

緊張とリラックスがバランス良く家庭に存在することは、大切です。家の中での人と犬猫の生活空間を、意識的に段階分けしてみる事は、バランスを良くする一つの方策になるでしょう。

profile

金巻先生(一級建築士)

一級建築士・博士(工学)・家庭動物住環境研究家一級建築士事務所 かねまき・こくぼ空間工房 主宰。

犬や猫といった家庭動物(ペット)との暮らしをテーマにした建築設計と、環境コーディネーターとして活動。適正飼養と環境整備に向けた学術研究も進めている。著書に『犬・猫の気持ちで住まいの工夫』(彰国社)、『ねこと暮らす家づくり』(ワニブックス)、など。ペット防災のNPO法人ANICE理事。東京都動物愛護推進員。H25年度日本建築仕上学会学会賞(技術賞)「ペット共棲住空間用の建材に関する研究と技術開発」

  • 「猫と暮らす住まいのつくり方」

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