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  3. 第51回 階段にまつわる注意

わんだふるな住まいの知識

ペットと暮らす住まいのポイントをケーススタディでご紹介します。

no.51

犬や猫と共に暮らすためのアイデア

階段にまつわる注意

家庭でくらす犬や猫にとって、家の中の大きな空間装置の一つに「階段」があります。

家庭内の一般的な階段では、中小型犬の多くでは体に負担になる可能性があり、使わせないようにするのが望ましいとされます。しかし、都市部の住宅では必ずといっていいほどあるものです。段差による高さの変化は空間を豊かにするものでもあるので、避けるばかりではなく、段のサイズを動物の体に合わせてみる、または、踊り場で工夫するといった対処で付き合ってみるのはいかがでしょう。

階段としつけを組み合わせて

私は、立ち入り禁止などのシツケと組み合わせ利用するということもお勧めしています。階段は、段を積み重ねて空間を上下につなげる装置です。段があるところは、「空間の仕切り」ですから、例えば「ここから先は入らない」といったトレーニングに活用できるからです。

昇降での体への注意ばかりが取り上げられる階段ですが、この空間の装置には、「空間の仕切」と「通路」という機能形状で、行動や心理面へ影響を与えることもあります。

階段下スペースに犬猫のハウスを置くのは?

例えば、階段下のデッドスペースの有効利用として犬猫のハウスを置こうと考える方は多いようですね。階段の下の空間は、犬のハウスとするのに高さ的に丁度よく、うまく利用しているようですが、私としては、2つの問題点からあまりお勧めしたくない工夫です。

まず1点目は、この装置は長い通路形状をしており、さらに、割と強い足踏みをするようにして人は移動していくというものです。足踏みされている真下で、ゆっくりは寛げませんよね。この踏みならす振動や音を、下の空間に伝えないようにするためには、それ相当の防音処置が必要でしょう。

2点目は、上下空間の出入り口の装置でもあることです。例えば、リビングの横にある階段室の下部を、リビング内から使う大型犬のハウススペースとしていたお宅がありました。寛いでいたのに、急に吠えたりソワソワするとお困りでした。リビングの人からは判りませんでしたが、犬は階段の上り下りを振動で感じ、人より先に誰かがやってくる事を察知し、そういった反応をしていたのです。玄関先にやってくる人に反応してしまうのと同じでしょう。階段は、上下空間の出入り口としての形をしているのです。

階段という空間装置のとらえ方

このように、居場所が階段の下や踏み口のすぐ側であれば、出入り口の横にハウスを置いたのと全く意味は同じなのです。人がそうとは意識しない間に、犬を門番のような状態にしてしまいやすくなります。犬猫にトレーニングで順応させようとしても、こういった環境では普通の飼い主さんには難しいことです。

階段は、昇降装置と言うことだけでなく、リビングやホールにあれば、その姿の美しさを楽しめます。犬猫との視線の高さの調整をする豊かな装置にすることだってできます。ただし、犬猫は入り口や音といったものに慎重です。階段という空間装置に対しても、犬猫は人とは違ったとらえ方をすることを尊重し、上手に活用したいものです。

profile

金巻先生(一級建築士)

一級建築士・博士(工学)・家庭動物住環境研究家一級建築士事務所 かねまき・こくぼ空間工房 主宰。

犬や猫といった家庭動物(ペット)との暮らしをテーマにした建築設計と、環境コーディネーターとして活動。適正飼養と環境整備に向けた学術研究も進めている。著書に『犬・猫の気持ちで住まいの工夫』(彰国社)、『ねこと暮らす家づくり』(ワニブックス)、など。ペット防災のNPO法人ANICE理事。東京都動物愛護推進員。H25年度日本建築仕上学会学会賞(技術賞)「ペット共棲住空間用の建材に関する研究と技術開発」

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