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  3. 第70回 猫の環境アメニティを考える(猫に必要な高さとは)

わんだふるな住まいの知識

ペットと暮らす住まいのポイントをケーススタディでご紹介します。

no.70

犬や猫と快適に暮らすためのインテリア

猫の環境アメニティを考える(猫に必要な高さとは)

猫に必要な高さとは?

前回の動線計画に続いて、人と関わるために猫に必要な高さについて考えてみましょう。

まず、「猫は高い場所に上がりたがる」と言われますが、なぜ高い場所に上がる必要があるのでしょうか。お部屋の高い場所から、眺め下ろす様子は楽しそうに見えますが、楽しい気持ちの時ばかりではありません。何か怖い物や不審なものがあるので、離れて観察していたい、と言うこともあります。猫にとっては、人はかなり大きな動物であることをもう一度思い出して下さい。人が何の気なく部屋を歩いていても、猫にとってはその一歩も大きいですね。動く人の横をくっついて歩いてみたいものの、ブンブン振り回される手足に注意しながら、となっている状況なわけです。では、猫がそんな余計な警戒をしないで人に近づけるに高さとはどこなのでしょうか。私からの提案としては、振り回される手足より「上」です。まずは「人の膝」より上、次に「肘より上」が候補としてあげられます。さらに、「人の肩の高さ」もポイントでしょう。ここは、人に鼻で挨拶するのにも、緊張しなくて良い高さです。猫は少しかがむ体勢で人の額や頭の臭いを嗅ぐことができます。つまり、ちょっぴり人より視線が高い位置にあるわけです。

人の動きを楽しむ箇所を設ける

猫アスレチックの動線の中に、人の動きを楽しむ魅力ポイントを設けるべきです。「人とふれあうポイント」は、お部屋の入り口や作業デスクの側とご案内しましたが、そこでこの高さを生かしてみて下さい。写真のお宅では、リビングの入り口付近にボックス型の猫用ステップを設けました。扉に一番近く、なおかつ、丁度顔の高さに来るようにステップを配置しています。ここでは、家族がお部屋に入ってくるのを待つのが猫の日課になっています。市販のキャットタワーでも同じ事ができます。青の線で示したように、人のヒジの高さより高くて、猫が人の肩程度に並ぶことのできる高さの段が、お部屋の入り口の横になるように、キャットタワーの向きを調整すれば良いだけです。このように、人との動きとの関係付けができているキャットタワーであれば、さらに長く続く猫通路(キャットウォーク)がなくても、猫としては十分に有効活用できるのです。

ただ、その際に注意しておきたいのは、猫はステップの上で方向転換をしなくてはいけないことです。キャットタワーであれば、その一段のステップは猫がその場でクルッと一回りできるぐらいの大きさ(直径30cm)があるものを選んであげましょう。

profile

金巻先生(一級建築士)

一級建築士・博士(工学)・家庭動物住環境研究家一級建築士事務所 かねまき・こくぼ空間工房 主宰。

犬や猫といった家庭動物(ペット)との暮らしをテーマにした建築設計と、環境コーディネーターとして活動。適正飼養と環境整備に向けた学術研究も進めている。著書に『犬・猫の気持ちで住まいの工夫』(彰国社)、『ねこと暮らす家づくり』(ワニブックス)、など。ペット防災のNPO法人ANICE理事。東京都動物愛護推進員。H25年度日本建築仕上学会学会賞(技術賞)「ペット共棲住空間用の建材に関する研究と技術開発」

  • 「猫と暮らす住まいのつくり方」

    ライフスタイルやプランに応じた住まいの実例が豊富!猫にとっての快適ポイントや危険対策がわかる!業者選び、内装材、予算などのお役立ち情報も!

  • 「犬・猫の気持ちで住まいの工夫」増補改訂版

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  • 「ねこと暮らす家づくり」

    猫の「あったらいいニャ~」に応えるための、賃貸やマンションでもチャレンジできる工夫を案内しています。

    ワニブックス刊 定価(本体 1,300円+税)