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  3. 第72回 猫の環境アメニティを考える(安全対策とは)

わんだふるな住まいの知識

ペットと暮らす住まいのポイントをケーススタディでご紹介します。

no.72

犬や猫と快適に暮らすためのインテリア

猫の環境アメニティを考える(安全対策とは)

猫の環境エンリッチメントを考える

動物の生活空間の環境の質を高めるというのは、「環境エンリッチメント」と言われます。「猫アスレチック」は室内飼育の猫のための環境エンリッチメントですが、猫の一生をとおして質の高いものであるために、成長と老化を想定して計画しましょう。

猫ステップの段差を考えるときは、大人猫のサイズで計画します。しかし、使用するのは大人猫時期だけでなく、仔猫期や高齢期にも同じ空間で生活することになります。猫の加齢による身体能力の衰えを想定しておかなければなりませんし、幼猫と超高齢猫には、高所にいける猫アスレチックは危険な場所にもなるので、工夫が必要です。

仔猫期から高齢期の環境エンリッチメント

まず、仔猫期ですが、生後半年までの幼猫期は高所は危険な場所です。幼猫期では、基本は単独で使わせない工夫が必要です。ソファーの座面に飛び乗れるように成長してくれば、ステップも使えるようになります。飼い主が見守っている状態で、いろんな場所にトライさせて、猫アスレチックでの安全な遊び方を学習させてあげましょう。

そして、高齢期です。一般的に、猫は11歳以上になると運動能力がガクッと衰えます。しかしながら、今までのお気にいりの場所に行けなくなるのは寂しいものです。老猫になっても高い場所に上れるように、緩やかなステップも設けておきましょう。緩やかなステップは仔猫期の学習にも使われますので、生涯を通じて使うものとして一箇所は確保しておきましょう。老猫で、ソファーの座面にも上がるのを苦労するようになってきたならば、アスレチックはもちろんのこと、人用の階段も使用を控えさせることが必要になります。

ステップの段差を工夫する

幼猫期と超高齢期では、安全のために高い場所への制限をしたいので、猫アスレチックでの昇降路について、1つご提案があります。作り付けなど常設のステップは、床から3段目ぐらい(床からの高さが60cm~80cm程度)を最下段とし、その下にはスツールなど移動可能な家具を組み合わせるのです。高い位置の常設ステップには、ジャンプ力がない幼猫や超高齢猫には自力では届きませんので、使用制限をしたい時には、スツールをどかせばよくなります。仔猫や高齢猫は低い位置のスツールは便利ですが、運動能力が高い大人猫の時期は、低いステップは無視されがちですから、無くても問題はありません。

このように、スツールや市販の低めのキャットタワーやなどを、上手に組み合わせて猫アスレチックを計画し、猫の成長に応じて柔軟に変更できるようにしておくのは、年齢差のある猫に、同じ空間で暮らさせる時の安全にもつながる工夫です。

profile

金巻先生(一級建築士)

一級建築士・博士(工学)・家庭動物住環境研究家一級建築士事務所 かねまき・こくぼ空間工房 主宰。

犬や猫といった家庭動物(ペット)との暮らしをテーマにした建築設計と、環境コーディネーターとして活動。適正飼養と環境整備に向けた学術研究も進めている。著書に『犬・猫の気持ちで住まいの工夫』(彰国社)、『ねこと暮らす家づくり』(ワニブックス)、など。ペット防災のNPO法人ANICE理事。東京都動物愛護推進員。H25年度日本建築仕上学会学会賞(技術賞)「ペット共棲住空間用の建材に関する研究と技術開発」

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