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  3. 第80回 消臭にも調湿建材の活用を

わんだふるな住まいの知識

ペットと暮らす住まいのポイントをケーススタディでご紹介します。

no.80

犬や猫と快適に暮らすためのインテリア

消臭にも調湿建材の活用を

室内の空気環境の健全性は、人だけでなく犬猫にも大切であることを、第76回「湿度調整の重要性」第77回「臭い管理の重要性」でご案内してきました。空気環境のためには空調機器だけではなく、床や壁・天井といった仕上げ建材にも機能性商品がありますので、その活用をお勧めします。

消臭・殺菌機能を持つ建材の発達

高温多湿な気候風土の日本では、微生物による臭いの問題を抱えてきました。そのため、風通しが良い間取りと建築構造、畳や漆喰仕上げ壁といった調湿機能に消臭・殺菌機能を合わせ持つ仕上げ建材が発達してきたのです。和室は襖などの紙素材や畳も多く湿度調整に役立っていました。畳の材料であるイ草、そして壁仕上げの漆喰は、消臭殺菌作用があるために、衛生面でも機能していました。しかし、近年の住まいの西洋化で、畳のある和室も減ってしまいました。また、畳や紙襖などは爪傷に弱いため、犬や猫の家では避けられやすい素材でした。湿度調整がしにくい状況がありましたが、現在はこれを克服するべく建築と建材技術が開発され、頼もしいアイテムが提供されています。

犬の臭いが壁などに付くのを防ぐには

例えば、壁紙では通気や吸放湿性能の優れた「呼吸する壁紙」というタイプがあります。植物などの自然素材が使われています。これに触媒作用で消臭する成分を組み合わせたものは、湿度を調整しながら悪臭の除去機能も期待できます。

実は、生ゴミやトイレの気になる悪臭成分というのは水に溶けやすい性質があり、空気中の水分にのって壁や布などに付着します。犬の臭いもこれに同じで、犬と暮らしている家は、壁やファブリックにも犬の臭いがすることがあるのです。現在の新しい技術の「呼吸する壁紙」はこの機能を逆に利用しています。臭いを乗せてきた湿気を壁に取り込んで、壁材で運ばれてきた悪臭を分解して消臭してしまおうというシステムです。効果を十分に生かすには、下地壁を「調湿石膏ボード」を使用しましょう。

「呼吸する壁紙」の特徴

自然素材を利用した呼吸する壁紙は、竹やコットンなどの優しい手触りと表情のあるものや、珪藻土やジュラクといった従来の左官仕上げのような表情をもつタイプがあります。こういった表情のものは光を柔らかく反射するので、落ち着きのある空間を創り出すことができます。ただし、引っかき傷には弱いので、人や犬、猫の近寄り行動の少ない壁面や、腰の高さ以上の位置での活用が安心です。また、消臭機能を有効的に活用するには空気が壁へと流れてこないと機能しませんので、通風換気もしっかり行いましょう。

profile

金巻先生(一級建築士)

一級建築士・博士(工学)・家庭動物住環境研究家一級建築士事務所 かねまき・こくぼ空間工房 主宰。

犬や猫といった家庭動物(ペット)との暮らしをテーマにした建築設計と、環境コーディネーターとして活動。適正飼養と環境整備に向けた学術研究も進めている。著書に『犬・猫の気持ちで住まいの工夫』(彰国社)、『ねこと暮らす家づくり』(ワニブックス)、など。ペット防災のNPO法人ANICE理事。東京都動物愛護推進員。H25年度日本建築仕上学会学会賞(技術賞)「ペット共棲住空間用の建材に関する研究と技術開発」

  • 「猫と暮らす住まいのつくり方」

    ライフスタイルやプランに応じた住まいの実例が豊富!猫にとっての快適ポイントや危険対策がわかる!業者選び、内装材、予算などのお役立ち情報も!

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    猫の「あったらいいニャ~」に応えるための、賃貸やマンションでもチャレンジできる工夫を案内しています。

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