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わんだふるな住まいの知識

ペットと暮らす住まいのポイントをケーススタディでご紹介します。

no.101

犬や猫と共に暮らすためのアイデア

ヒトも一緒に使う隠れ家空間

犬や猫との居場所の「隠れ家」空間について、これまで「犬が使う」「猫が使う」ための工夫についてお話ししてきました。金巻が一番大切にしているのは、住まい手の「快適性」だけではなく、一緒に暮らすことで得られる家族としての「絆」です。そこで、記念すべき「連載101回目」として、ヒトと犬(猫)が一緒に使う「隠れ家」空間についてご紹介します。

犬でも猫でも究極の「隠れ家」空間は、ある程度の狭さの潜り込むような「ホコラ状ベッド」をお薦めしてきました。この「ホコラ状ベッド」をちょっぴり大きくしてヒトも入ってしまおう、というのが今回の提案です。

引きこもれる「コクーン空間」を楽しみにも活用

犬猫の居場所となるハウスは、「隠れ家」として構成できるようにお薦めしてきましたが、私達だって子どもの頃、押し入れの中に潜り込んで「秘密基地」にして遊んだりした経験はありませんか。誰にも邪魔されない小さい空間での自由時間は、発想の時間に多く使われました。広々とした場所は大切ですが、心と体を癒やす時に「守り包まれた小空間」を求めるのは、全ての動物に共通する要求でしょう。引きこもれるホコラ状の小空間は「コクーン(繭)」と呼ばれたりします。ここには、自分以外には心を許せる相手・仲間しか入ることは許されません。

この「コクーン空間」はリラックスして思考を展開できるため、思考・発想が重要な業務とされるITやデザインの事務所でも活用しているところがあります。私も、犬や猫と同伴出勤するオフィスで、「ヒトと犬猫が一緒に使うコクーン空間」として創ってみました。休憩だけでなく、ちょっと新しい発想が必要な時に使われていたようです。内部天井は快適であるように調湿性能のある仕上げで、床は犬が歩いても足腰に楽なよう少し硬めのマットとしました。この事例の様に機能にこだわるだけでなく、楽しむ事を重視して、天井部分に空を模した遊び心のある壁紙を取り入れるのもお薦めです。

お手軽な「コクーン空間」の使い方と「ペット防災」との関係

自宅内に「コクーン空間」を造るのは、大がかりで無理そうに思えますが、今すぐできちゃうお手軽なものにテントがあります。アウトドアを楽しむ方でなくとも、防災グッズとして常備しているご家庭も増えていますね。ウチのコと絆を深める「一緒に入っちゃうハウス(隠れ家)」として日常的にも活用してみてください。リビングの隅に広げ、まずはヒトがお気に入りのクッションや本を持ち込み、テント内のリラックスタイムを楽しんでください。ヒトの様子に犬猫もその空間はとても安全な場所なのだろうと、潜り込んで一緒にくつろぎ始めるはず。身を寄せ合いお互いの体温や息づかいを感じ、家族である絆を深めてみましょう。

実は、この日常の楽しい経験は防災につながるのでお薦めなのです。災害時、避難所でテントを活用される状況も増えています。犬猫に防災訓練はできませんが、テントで日常も楽しく過ごす習慣がついていると、避難生活でのストレスを軽減することにもなります。

一緒に使う「隠れ家」空間のオフィスでの事例
一緒に使う「隠れ家」空間のオフィスでの事例

profile

金巻先生(一級建築士)

一級建築士・博士(工学)・家庭動物住環境研究家一級建築士事務所 かねまき・こくぼ空間工房 主宰。

犬や猫といった家庭動物(ペット)との暮らしをテーマにした建築設計と、環境コーディネーターとして活動。適正飼養と環境整備に向けた学術研究も進めている。著書に『犬・猫の気持ちで住まいの工夫』(彰国社)、『ねこと暮らす家づくり』(ワニブックス)、など。ペット防災のNPO法人ANICE理事。東京都動物愛護推進員。H25年度日本建築仕上学会学会賞(技術賞)「ペット共棲住空間用の建材に関する研究と技術開発」

  • 「猫と暮らす住まいのつくり方」

    ライフスタイルやプランに応じた住まいの実例が豊富!猫にとっての快適ポイントや危険対策がわかる!業者選び、内装材、予算などのお役立ち情報も!

  • 「犬・猫の気持ちで住まいの工夫」増補改訂版

    単なるペットのトラブル対策に終わらないしつけやトレーニングも踏まえながらのアドバイスが満載。かわいいイラストも◎。改訂版では、室内環境の意識が高まっている猫の情報と、東日本大震災で課題がみえたペット防災対策が増えました。

    彰国社刊 定価(本体 1,800円+税)

  • 「ねこと暮らす家づくり」

    猫の「あったらいいニャ~」に応えるための、賃貸やマンションでもチャレンジできる工夫を案内しています。

    ワニブックス刊 定価(本体 1,300円+税)